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長春日本人教師会

長春にて日本語講師をしている日本人教師による勉強会や活動予定、活動報告などを記載していくブログです。 長春日本人教師会のホームページ→http://www.geocities.jp/changchun_jpt/index.html

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第118回勉強会報告

「長春日本人教師会主催第118回日本語教育勉強会」


「『全中国選抜日本語スピーチコンテスト』の練習、指導に関する実践報告」
長春大学 坂本紀仁先生


 2015年5月16日に開催された第10回全中国選抜日本語スピーチコンテストの際の指導法について発表された。
 まず学生の選抜方法は出場したい学生にテーマに即した作文を書かせ、教務室でスピーチ発表をさせた。そして、日本語学科の教師による投票を行った。そこで選ばれた学生は生徒会の副会長や、日本語クラブの会長、新聞部の部長、学級委員などを行っており、リーダーシップがあり、時間意識が高く、社交性・スピーチ力も高い学生である。また、日頃から日本人との交流は積極的に行っている。
 練習期間は2週間程度で、基本的に毎日16:30~18:00の一時間半から2時間程度であった。大会審査基準から論理的で説得力のあるスピーチ指導と目標を決め、実践した。


≪具体的な練習方法≫
①「NHKニュース」を使い、オーバーラッピング法で発音やイントネーションの練習。学生が選んだニュースを音読する。


②テーマスピーチの練習
・時間の計測4分30秒以内、4分50秒以内と練習。→自己確認のため録音をしながら、発表をする。また、他の学生の感想、意見を聴く。


・テーマに関するカタカナ語の発音の指導。 例:スマホ、アプリ、ライン、スクリーンなど。


③即席スピーチ
課題テーマ (YESNO型、選択型、具体例提示型)
1分間考え2分以上発表する。ほかの学生に感想・意見を聴く。
初めはうまく考えをまとめられなかった。そこで、発表のフレームワークを考え、それにしたがって話すように練習した。


即席スピーチで留意した点:①50%の具体例にすること。②過度な語用発音を訂正しないこと。


≪反省点と今後の課題点≫
・流暢な日本語の使用 →学習時間の壁
・生徒の資質の影響 →特定の学生だけでなく、より多くの学生の語学力のレベル向上
・より長期的、段階的、汎用的な計画、練習案の必要性 



「スピーチ大会の準備と練習」
長春理工大学  大田拓実先生


 2015年9月26日(土)に華僑外国語学院で開催された、「第八回育英杯吉林省大学生日本語スピーチコンテスト」の準備と練習についての発表をされた。準備期間として2015年7月7日(火)~2015年9月26日(土)まで準備と練習を行った。学生の選抜方法については中国人の先生の推薦で2人の学生を選んだ。
Aさん:大人しい。客観的な立場で物事を考えられる。暗記が苦手。 
Bさん:活発的。知識が豊富。考えながら話すのは苦手。
テーマ決めに関しては、今回の大会ではテーマの範囲が広かったため、学生と話し合い1日かけて決めた。しかし、学生に主体的に考えさせ、指導はアドバイス程度にとどめた。
 まず、作文予選がありそれに向けて、中国式の作文と日本式の作文の2種類を書かせた。
Aさん:『「母国語」を忘れないように』(中国式)
Bさん:女性が輝く中国と日本』(日本式)
作文の添削は自由に書かせたが、時間制限の4分を超えていたため、3回の作文修正をして4分にまとめさせた。発音チェックは2日間行い、1日1時間~2時間で学生が弱いところを重点に練習を行った。表現力では間の取り方を重視し、「Just4分」で終われるように練習を重ねた。


即席スピーチ練習の方法
・テーマ決めに出てきた案の中から、抜粋して考えさせた。
・1週間に2つのテーマで書かせる。(7月中、8月中)
・1日5つのテーマを即席でスピーチさせる。(9月中)


思考1分・発表3分
10年後の未来、日本語学習者に必要な能力、少子高齢化、就職難、食料自給率などのテーマを練習

思考30秒・発表2分30秒
若者に必要なもの、早期言語教育、マナー、伝統文化と継承、日本文学などテーマを練習


大会本番は動作確認、最終チェック(テーマスピーチ)、クイズを確認。


反省点・課題
・即席スピーチの練習で難しいものを練習させ過ぎてしまい、本番で失敗。
・プレゼン力をもう少し磨くべきだった。(※話を簡潔にまとめる能力)
・キーワードを瞬時に閃く為に、考えさせる授業を取り入れるべきだった。
・心理的なものを学ばなければいけないと実感した。
・テーマと即席スピーチの完成度をできる限り近づけること。



「スピーチ指導から見えてくるもの」
吉林大学 森屋美和子先生
 2012年4月からスピーチコンテストの指導を行われている。去年から日中関係の改善や日本語関係の学会・団体の活発になってきて、スピーチ大会が徐々に増えてきている。そして、テーマもそのときそのときの時代の流れ・社会に重点がおかれている。また、学生の身近な話題や人間の心を捉えたものもテーマになってきている。
 また、学生の参加意欲が二極化している。挑戦したいという意欲が希薄になった学生と、視野が広くいろいろな経験をしている学生である。ただ、両者とも発想力には欠けている。そこで、スピーチについてアンケートを行ってみた。実施期間は2015年9月16日~9月23日で、スピーチ経験者の北京大学大学院と吉林大学大学院の学生 10名と学部生の2年~4年 72名である。

Q1: あなたが出場前に考えていたスピーチコンテストと実際出場してみて、ギャップありましたか。
- 10人中10人が、ギャップはある、思った以上の緊張感


Q2: あなたはなぜスピーチコンテストに参加しましたか。
- 自分の日本語力を高めたかった
- 人前で話すスキルを身につけたかった
- 先生に進められて出場したが、結果的にはよかった。プレッシャーに強くなった。
- 視野を広げたかった。
- 大学以外の人と知り会える。
- 履歴書に書ける。
- 賞品が魅力的。


Q3: スピーチコンテストに出場して、あなたの得たものは何ですか。何か変わりましたか。
- 上には上がいること、自分の弱点に気づき、あらたな目標ができた。
- 日本語を話したい、人前で堂々と言える自信につながった。
- テーマから考え方の視野が拡大した。
- 勇気をもて明るくなった。


Q4: スピーチコンテストの結果又は出場経験は、あなたのその後に影響しましたか。
- 緊張せずに人前で話せるようになった。
- 印象に残りやすい文章を書くことで、作文に役立つ。
- 留学するチャンスを掴んだ。   
- 結果より得たものが多い、プロセスが一番。
- どんなことでも事前の準備が大切であることがわかった。


Q5: スピーチコンテスト出場経験は仕事に 又は大学院 にプラスになるという実感がありますか。
- 会社の面接、インターンシップの面接、大学院推薦入試の面接などで、高く評価された。
- 人前で話せるようになり、自信につながる。
- 目標をもってやることの大切さを学んだ。
- 協賛会社との面識がもてた。


Q6: その他、自由に意見をお書きください。
- スピーチコンテストに出るべきである、結果よりプロセスが大切、自信がつく。 
- 自分の意見の入った自由さのあるスピーチが大切である。
- コンテストも改善が必要。   
- 成績を気にするひとは出場すべきでない。



以上の結果からスピーチを行う上でのメリットとデメリットは何かを考察してみた。



スピーチのメリット
- 時代の動きに敏感になる。
- 日中の文化にも目が向けられる。
- 視野が広がる。  
- 自分への自信につながる。
- 話し方の改善。 
- 日本語力の向上 会話、発音、アクセントなど。

スピーチのデメリット
- 練習の仕方によって苦痛になる。
- 時間をとられる。
- スピーチで必ず日本語が向上するという保障はない。


Q1:  スピーチコンテストはどのようなメリット・デメリットがあると思いますか。
メリット:会話力の向上、考え方・表現力の向上、自分を鍛えられる、度胸・勇気
デメリット:時間がかかる、勉強時間が少なくなる、覚えるだけのスピーチ


Q2:  スピーチコンテストはあなたの学習や将来の目標に役立つと思いますか。
役にたつ:72% 役に立たない:18%  どちらとも言えない:10%


Q3:  あなたはスピーチコンテストにスピーカーとして参加したいですか。
参加したい:24% 参加したくない:33% どちらでもない:40%
Q4:  質問3で「はい」と答えた方は、どうして参加したいのですか。その理由は
何ですか。
- 練習から成長したい
- 声が大きくなり、勇気がもてる
- 自分の視野を広げたい
- 日本語力の向上
- 自分の能力を高めたい
- 自分へのチャレンジ
- 日本語を使いたいから
- 通訳者になりたいので


Q5:  質問3で「いいえ」と答えた方は、どうして参加したくないのですか。その理由は何ですか。
- 自分に向いてない
- スピーチに興味がもてない、おもしろくない、好きでない、つまらない
- 発音が悪いし、緊張しやすいから
- 自分の日本語レベルが高くないから
- 自分の時間が重要
- 人前で話すのがいやだから 
- 時間が長いし、形式がつまらない
- 受賞しないとストレスになる


Q8: これまでのスピーチコンテストを聞いて、あなたがもっとも印象に残ったのはどのようなスピーチでしたか。
- 流暢で、自分の主張が明確なこと
- おもしろくて、ユーモアがあるスピーチ
- 声が大きくて、感情や表現力があるスピーチ
- 身振りも大切
- 聞き手にわかりやすいスピーチ
- 新しい考え方のあるスピーチ
- 対話力のあるスピーチ
- 即席スピーチ
- 時事のテーマ「pm2.5」


森屋先生が考えるスピーチの傾向と審査員の着眼点
①自然な表現、自分のことばで自分の主張が聴衆に伝わるもの
②発音、アクセントが多少悪くても、全体的にユーモアがあり、聴衆に印象を残せるもの
③自分の経験的なことが多く、現実味があり、聴衆を感動させるもの
④原稿の暗唱ではなく、パフォーマンスが自然で全体がまとまっているもの


以前は型にはまっていた人が優秀とされていたが、最近では自然な動きで、訴える人が優秀とされてきている。


これから出場するにあったっては以下のことに配慮する必要がある。
1.大会の特徴を把握
2.審査方法 (何に重点をおいているか)
3.審査員の構成 (中国人の方が多いか、日本人の方が多いか)
4.テーマスピーチの意図


また、各自の目標を立てる。
学生への目標: 
1.自分への目標を立ててもらう なぜスピーチにチャレンジするのか
2.スピーチで何を得たいのか
私自身への目標:
1.学生のスピーカーとしての欠点をできるだけ少なくする
2.学生がスピーチに情熱をもて、楽しいと思ってもらえるようにする
3.練習スケジュール → コンテストの日が目標
4.練習は建設的になるように - 学生との意見交換、学生の性格、特徴を知ることに時間をかける
5. 次の指導者へバトンタッチができるように


過去の資料のファイリングと報告書作成


≪私の考える今後のスピーチの課題≫
①社会の動きに敏感になるようなテーマを扱っていく。
②現在は主張スピーチがメインで提案スピーチ、問題発見スピーチ、意見スピーチ、製品説明スピーチなどのスピーチの練習を行い、プレゼンテーションスキルを磨く。そうすることによって将来的に学会発表や会社での製品発表も行えるのではないか。今年の育英杯は発表者と主張者の一体感があった。これからは視聴者も巻き込むようなコンテストがいいのではないだろうか。そのため、視聴者を惹きつけるためには審査員だけでなく会場の人からも投票してもらう。すると、スピーカーと聞き手のコミュニケーションが生まれ、会場に一体感が得られるだろう。

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