長春日本人教師会
長春にて日本語講師をしている日本人教師による勉強会や活動予定、活動報告などを記載していくブログです。 長春日本人教師会のホームページ→http://www.geocities.jp/changchun_jpt/index.html
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第109回 勉強会報告
以下の内容で勉強会を行いました。
1. 司会挨拶、参加者自己紹介
2. 平野宏子先生(吉林華橋外国語学院)
「日本語と中国語の作文の書き方について」
学習者が感じる日本語作文と中国語作文の差異をアンケートで調査し、日本人教師が作文指導の際に出くわすであろう様々な問題を提示された。
中国の日本語教育現場において作文の授業は日本人教師が担当することが多いが、その際、日本人教師の中国語能力は問われないことがほとんどである。作文指導時に日本語教師の中国語知識が不足していると、学習者の誤用の原因が分からない、教師の説明が理解されにくいといったことが出てくる。このことから、作文授業は中国人教師が担当したほうがいいのではないかという意見もある。
では、どういった点で日本人教師は作文指導に苦しんでいるのか、主な原因は以下の四点である。
1、体験談の細かな記述や具体例が少ない。
2、結論がみんな似ている。特に、社会問題に対しての解決策は、
「政府がこうやったほうがいい。」と書くことが多い。
3、語彙、表現が仰々しい。
4、最後に「みんなで頑張ろう。」といった内容を書く。
作文受講を通して、学習者自身も中国語での作文と日本語での作文は書き方が違うことを認識したようである。今回は学生に対する意識調査により、以下の大きく二つの点について言及がなされた。
一つ目は、
日中の作文教育では書かなければいけない内容がそれぞれ違うこと。
二つ目は、
日中の作文教育ではそれぞれの教師の指導のポイントが違うこと。
アンケート調査は吉林華橋外国語学院の日本語専攻の3・4年生161名を対象に、37項目について回答してもらった。37項目の質問を日本語作文と中国語作文の場合に分けて聞き、学生が以下の差異・特徴を感じていることがわかった。
・中国語作文の主な特徴
1、偉人の言葉を引用することが良しとされる。
2、諺や美しい表現などを多様に使い、
歴史的な大きな視点から書くことが求められる
・日本語作文の主な特徴
1、具体的で読み手がわかりやすく書くことを良しとされている。
2、事実を事実のまま書き、
自分の正直な意見を書くことを求められている。
・日本語作文・中国語作文、主な共通の特徴
1、個人的体験や感情をよく表すことが求められている。
2、構成を考えたり簡潔に書くなどと いった読み手を
意識することが求められている。
また、インタビュー時に、中国の作文教育についても質問し以下の返答を得た。
中国人学生は中学校と高校の語文の授業で作文を学ぶ。そして、大学入試前の3か月間は2日に1回作文の練習をすることもある。作文の指導法は教師が生徒に単語や表現を与え、それを用いて生徒が作文を書き、教師がそれを添削するというもの。また、教師は孔子など中国の偉人の言葉を積極的に教えているので、その影響が学生にも大きい。
上記のような中国の作文教育が以下のように中国語作文に影響を与えている。
・日本語作文・中国語作文の差異
1、日本語作文は具体的に書き、中国語作文は簡潔に書く。
2、日本語作文では社会問題の解決策に対して具体的に書くが、
中国語作文では具体的内容には触れない。
3、日本語作文では面白い内容が良いとされるが、
中国語作文で面白い内容を書くとリスクがある。
(大学入試の評価基準の影響)
4、中国語作文では美しいことを書くのが望まれる。
そのため、偉人の言葉などをよく引用する。
身近な人の言葉を書いても意味がない。
また、中国の大学入試では偉人の言葉の引用に
点数が配分されている。
5、日本語作文では正直な意見を書いていいが、
中国語作文では社会に対する不満など
悪影響がある場合があるので書いてはいけない。
6、日本語作文では、説得力を補うための具体例として
例文や数字を使うが、
中国語作文では「多くの人」などの曖昧な表現も許容される。
7、中国語作文では、指導教師の考えに合うように書くか否かで、
作文が評価されやすい。
上記のように日本語と中国語での作文の違いが起こる原因について、ある学生は、日本では「人間関係、性格、心情」に気を配りながら書く事を求められ、中国では「祖国の賛賞」を求められるからだと、述べている。
中国の作文教育では、常に大きなことを意識し、作文の結論を「みんなで頑張ろう」など、国や社会の為になる言葉で締めくくることが良しとされていることが分かった。
3、南條淳(長春工業大学)
「グラフを用いた作文授業案についてのワークショップ」
今回は、グラフを用いた作文授業案を考えるため、以下の用法で活動を行った。
1、中国の日本語教育でグラフを作文授業に用いる意義を説明。
2、四班に分かれてのワークショップ形式で、
グラフを用いた効果的な作文指導案を考える。
3、各班の作文指導案をポスターで発表する。
4、各班の代表者が口頭で発表する。
まず、最初に中国でなぜグラフを作文授業に用いる必要があるのかを「教育大綱」を引き合いにして説明を行った。
(昨年度の岩崎先生の発表を再掲、復習を行った。)
中国には教育部が定めた日本語専攻大学生用の指導要領の
「教育大綱」というものがある。教育大綱では、主に以下のことが定められている。
・平均的な授業時間数や開設するべき授業内容。
・具体的な到達目標。
・語彙や文型リスト。
日本語専攻大学生に対しては、「手紙文」「調査報告書」「説明書」「論文」などの作成能力が求められている。中でも、論文作成にかかわるものが中心である。よって、「教学大綱」における作文授業の目指すところは「論文の作成」であると言える。そして、そのために学生が養わなければならない能力は以下の四つであると定められている。
①文法能力
②正確に他人の観点を引用・評論する能力
③自分の文章を修正する能力
④資料分析能力
今回は④の資料分析能力に注目し、グループワークでグラフを用いた効果的な作文指導案を考えた。全体を四班に区分し、各班は配布された資料の中からどのグラフを使って授業をするのかを相談し、指導案を作成した。以下に各班の指導案を掲載する。
≪♠班の指導案≫
使用グラフ:「各国の高校生の留学志向」
1、グラフの読み方。(5)
2、問題点を読み取らせる。(5)
3、問題点を発表させ、クラスで意見を共有する。(10)
4、(3)をもとに討論し、自分の意見を発表させる。(10)
5、自分の論点をまとめ、方向づける。(30)
(作文の材料・構成などを記した「作文メモ」を作成させる。)
6、以上をもとに作文(論文)を書くよう指示する。(30)
(字数は400字)
≪♦班の指導案≫
使用資料:「各国の高校生の留学志向」
目標・目的:グラフを読み取ることが出来るようになる。
1、組別にグラフを読み取り、描写する。
2、海外派遣と受け入れ生を描写する。
3、要約を発表・板書して、グループディスカッションをする。
4、全体意見交換を行う。
(グラフから推測しての自分の意見を発表する。)
5、作文推敲を個人で行う。
宿題:補足の資料、自論の展開に必要な資料を探してくる。
≪♥班の指導案≫
使用資料:「結婚年次別に見た、恋愛結婚・見合い結婚の構成比」
1、課題提示
・グラフを示して関連資料を宿題として学生に探させる。
2、グループディスカッション
・持ち寄った資料を見せ合い、グループで議論させる。
3、発表
・ディスカッションの内容発表
4、教師のコメント
・教師による評価・コメント
・教師が用意した資料を説明
5、ディスカッション
・日中比較・背景考察・そもそもの結婚のもつ意味などを議論
6、作文
・上記の中から自分の考えをまとめて作文
7、評価
・内容・表現・文法を評価
8、再提出
・学生自身で自分の作文を書き直し、提出する。
・教師がそれを再評価する。
≪♣班の指導案≫
使用資料:「結婚年次別に見た、恋愛結婚・見合い結婚の構成比」
目標:グラフを読み取らせ、変化を表す表現や引用の仕方を学ぶ。
最終的に結論をまとめる。
1、導入(15分)
2、グループワークでグラフの読み取り(10分)
3、クラスで共有(5分)
4、関連語彙の確認(15分)
5、考察(45分)
・原因・焦点を絞り、クラスで共有する。
・必要な資料を配布する
宿題:根拠となるデータを収集しまとめる。
以上
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